前回のコラム『要注意!「困ったときはとりあえずAIに相談」は正しいか?』では、AIは情報提供者に過ぎず相談役にはなれないことをお伝えしました。
その中で、AIは膨大な情報をまとめることはできても、あなたを理解して寄り添った提案はできないことをご説明しましたね。
今回は、その部分をさらに深掘りして、AIを使う上で決して忘れてはいけない大切なポイントについて、お話ししたいと思います。
AIはあなたの気持ちも考えも知らない
生成AIなどを利用するとき、プロンプトという指示や命令が必要になります。ではその指示を出すのは誰でしょう?他ならぬ人間ですよね。
AIはあくまでも、人間からの指示を受け、それに応じて適切な仕事をする“受け身の”アシスタントです。
そしてAIによく働いてもらうには、より質の高い、具体的な指示を与える必要があるのです。
しかし、ビジネスで抱える悩みや問題は、いつもそうはっきりと言語化できるものばかりではないですよね。
なんとなく、「このままじゃダメな気がする」とか、「どんな企業を目指すべきか」とか、漠然とした悩みや不安につきまとわれることも多いのではないでしょうか。
ではAIに漠然とした質問をするとどうなるか。
例えば「仕事がうまくいく方法」を尋ねると、自己分析をしろだの目標や優先順位を明確にしろだの、まあ事細かに箇条書きで教えてくれます。でもそれは、あなたが知りたかった答えですか?おそらく、違いますよね。
AIは、あなたが自分の仕事にどのような理念や理想、あるいはプライドを持っているのか、何にもやもやしていて何がイライラするのか、どんな出来事があってどう感じたのか、知ったこっちゃありません。
AIに自分の悩みを理解してもらおうと思うなら、まずは自分について事細かに紹介しなければなりません。
あなたが言葉にできないこと、自分でも何が問題だかわからないこと、どうしたらいいか決められないことを、AI自身が察して言葉にすることはできないのです。
あなたの話を聞き、仕事がうまくいっていないのは職場に問題があるのか、それともあなたの考え方に原因があるのか、意見をくれたり指摘してくれたりするのは、AIではなく人間なのです。
生成AIはナビゲーションシステムのようなもの
こうした性質を踏まえると、生成AIは道案内に使うナビのようなものだと捉えられると思います。目的地を設定すれば、何通りかの適したルート、到着予想時刻や渋滞情報など、詳細に教えてくれますよね。
ですが、目的地を決めるのは人間です。ナビは、あなたが何を探しているのか、どこに行きたいのか、あなたから情報をもらわなければ何もわかりません。
あなたが蕎麦屋かラーメン屋か迷っていても、連休にどこに行こうか悩んでいても、「暑いから蕎麦がいい」とか「混むから家でゆっくりしよう」という提案はしてくれないのです。
自分の考えがはっきりとしていないのにAIに答えを求めることは、目的地も決まっていないのにナビを設定しようとするようなもの。
裏を返せば、目的地さえはっきりしているなら、ナビが手放せないツールであるように、AIもまた強力な助っ人になれるのです。
AIはあなたの会社の経営理念をゼロから作ることはできませんが、あなたが作った文章をより伝わりやすく添削することはできます。
AIはあなたが悩んでいる理由を理解することはできませんが、悩みの原因がわかれば傾向と対策は教えてくれます。
つまり生成AIを有効活用するには、漠然とした悩みから明確な目的地を導き出しておかなければならないのです。
結論:AIに質問する前に自分の考えを明確に!
繰り返しになりますが、AIはあくまでもあなたの質問に対する情報提供者であり、あなたの心の内を察してくれる相談相手ではありません。
AIを有効に活用したいなら、まずはあなた自身が自分の悩みの本質を理解し、原因を見つけ出し、解決すべき課題を具体的にしておかなくてはなりません。
そのうえで、「FAQをわかりやすく添削して」とか、「タイムマネジメントについて詳しく」というような指示を出せば、AIは真価を発揮できるでしょう。
AIの仕事は、あなたの考えに合致する情報を提供すること。AIにあなたの理念は語れません。自分がどんなことを考えているのかは、あなた自身がAIに教えなくてはならないあなたの仕事なのです。
ではその仕事は、あなたが一人で孤独に成し遂げなければならないことでしょうか?いいえ、違います。
そうした自分ではどうしてよいかわからない悩みを聞いて最適な提案ができる人間こそが、コンサルタント。こだまシステムでいうところの、『IT戦略顧問』なのです。