「クラウドストレージ」という言葉、もうみなさんご存じですよね。
でも、「なんとなく便利そうだけど、結局何?」「今使っているNASとはどう違うの?」と思っている方も、実はまだ多いのではないでしょうか。
今回の「今さら聞けない」シリーズでは、そんなクラウドストレージの基本から、特に中小企業の視点に立ったメリット・デメリット、そしてどんな企業におすすめなのかを、わかりやすく解説します。
また、クラウドストレージの利用は、震災やシステム障害時のデータ消失を避ける「BCP(事業継続計画)」の基本戦略としても非常に重要になります。
データ消失という致命的な事態を避けるためにも、利用を迷っている方はぜひご一読くださいね!
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クラウドストレージって、結局何?
まずは、クラウドストレージが何かを簡単に説明します。
かつては、顧客情報、契約書、会計データなどの重要な企業データは、社内のPC本体、またはUSBメモリ、外付けハードディスク、そして社内サーバーやNAS(Network Attached Storage)に保存するのが一般的でした。
しかし、クラウドストレージは、インターネット上(=クラウド)にデータを保存するサービスです。
イメージとしては、インターネット上に会社専用の「堅牢な貸し金庫」があって、そこに会社の重要なデータを安全に出し入れできる、と考えるとわかりやすいでしょう。
クラウドストレージを使うメリット
では、中小企業がクラウドストレージを使うと、どんな良いことがあるのでしょうか?主なメリットを4つご紹介します。
1.どこからでも安全にアクセス可能
インターネットにつながっていれば、オフィス、外出先、自宅など、場所やデバイス(会社のPC、社員のスマホ・タブレットなど)を問わず、必要なデータにアクセスできます。
例えば、営業担当者が外出先から最新の提案資料を確認したり、テレワーク中の社員がオフィスと同じようにデータにアクセスしたり、といったことが安全に、かつスムーズに実現できます。
2.デバイスや社内サーバーの容量・負荷を軽減
大切な業務データをクラウドに保存すれば、各社員のPCや社内サーバーのストレージ容量を圧迫しません。
これにより、PCの動作が軽快に保たれ、社内サーバーの増強コストを抑えることができます。容量不足で業務が滞る、といった悩みも解消されます。
3.「データ紛失」という致命的なリスクを大幅に軽減
もし社員のPCが故障したり、オフィスが災害に見舞われたりしても、クラウドに保存されたデータは安全です。
デバイスや社内に直接データを保存していると、故障や紛失、盗難、災害(地震、火災、水害など)でデータが完全に消えてしまうリスクがありますが、クラウドなら高い安全性と復旧性を確保できます。これは、中小企業にとってBCP(事業継続計画)の重要な柱となります。
4.チーム内のデータ共有・共同作業が劇的に効率化
チーム内でのデータ共有や、取引先とのファイル受け渡しが非常に簡単になります。
共有したいデータを選び、リンクを送るだけでOK。大容量のファイルをメールで送る手間や、バージョン管理の混乱も解消されます。
複数人が同じファイルを同時に編集することも可能で、チーム全体の生産性向上に貢献します。
クラウドストレージのデメリットと対策
もちろん、クラウドストレージには注意すべき点もあります。
特に中小企業としては知っておくべき主なデメリットと、その対策を見ていきましょう。
1.インターネット環境への依存
クラウドストレージはインターネット上で動くサービスなので、ネット環境がない場所ではデータにアクセスできません。
オフィスや店舗のネット回線が不調だと、業務に支障が出る可能性があります。
オフラインでも作業できる同期機能を持つサービスを選ぶことも有効です。
2.セキュリティと情報漏洩のリスク
サービス提供側がセキュリティ対策をしっかり行っていても、不正アクセスや情報漏洩のリスクはゼロではありません。
特に、企業の機密情報や顧客の個人情報を扱う場合、その影響は甚大です。
従業員へのセキュリティ教育も不可欠です。
3.利用料金とコスト管理
多くのクラウドストレージサービスは無料プランを提供していますが、ビジネスで十分な容量や機能を利用するには有料プランが必須と言えます。
月額/年額の利用料が発生し、利用量に応じてコストが増える可能性があります。
初期費用はかからなくとも、長期的な運用コストを見積もることが重要です。
クラウドストレージとNASの違いとは?
クラウドストレージとよく比較されるものに「NAS(Network Attached Storage)」があります。
どちらもデータを保存する場所ですが、中小企業が切り替えを検討する際には、知っておくべき大きな違いがあります。
- クラウドストレージは、手軽さ、場所を選ばないアクセス性、そして管理の手間がかからない点が魅力です。
災害対策もサービス側に任せられます。
⇒初期費用を抑えたい、管理の手間を減らしたい、どこからでも安全にアクセスしたい中小企業に最適です。 - NASは、初期費用はかかりますが、一度設置すれば自社の管理下にデータを置けるという安心感があります。
社内ネットワークでの利用が主で、カスタマイズ性が高いのが特徴です。
⇒自社でIT管理ができる体制があり、データの物理的な所在を重視する企業に向いています。
どちらを選ぶかは、貴社の利用目的、セキュリティポリシー、BCP対策の方針、そしてIT管理体制によって変わってきます。
クラウドストレージがおすすめの企業は?
NASと比較しても、クラウドストレージは、以下のようなニーズを持つ中小企業に特に向いています。
IT専任担当者が不足している企業
NASのような機器の購入・設置・設定・メンテナンスの手間が一切ありません。
アカウントを作成すればすぐに使い始められ、運用はサービス提供者に任せられるため、ITリソースが限られている企業に最適です。
テレワークや外出先での業務が多い企業
インターネット環境さえあれば、オフィス、自宅、外出先など、場所やデバイス(PC、スマホ、タブレット)を問わずデータにアクセスできるため、テレワークや出張・外出する社員が多い企業には最適です。社員の生産性向上に直結します。
初期投資を抑えたい企業
多くのクラウドストレージサービスには無料プランがあり、少量のデータであればコストをかけずに利用を開始できます。
NASのような初期の機器購入費用がかからないため、まずは導入効果を試したい場合にも始めやすいです。
社員間のデータ共有や共同作業を効率化したい企業
チーム内でのデータ共有が非常に簡単で、リンクを送るだけで共有が可能です。
共同編集機能も充実しているため、会議資料の作成やプロジェクト管理など、チームでの作業効率を劇的に高めたい場合に特に有効です。
データ消失のリスクを最小限に抑えたい企業(BCP対策)
デバイスの故障や紛失、オフィスが被災するなどの事態でローカルデータが失われるリスクを心配しているなら、クラウドストレージは非常に有効なBCP(事業継続計画)の選択肢です。
データは遠隔のデータセンターで安全に保管されているため、万が一ローカルデータが消失しても復旧が可能です。
まとめ:クラウドストレージでビジネスを強化しよう!
クラウドストレージは、データ管理を効率化し、災害やシステム障害に対するリスクを軽減する、非常に便利なサービスです。
メリットとデメリット、そしてNASとの違いを理解した上で、貴社のビジネスに合ったサービスを選び、ぜひ活用してみてください。
もし、「どんなサービスがうちの会社に合ってるの?」と迷われたら、Google Drive、Dropbox Business、OneDrive for Business、iCloud(Apple製品中心なら)などが、中小企業でも導入しやすいでしょう。
まずは無料トライアルや、小規模な有料プランから試してみて、その利便性と安全性を実感してみてはいかがでしょうか?
主要なクラウドストレージサービス
- Google Drive: https://www.google.com/intl/ja_jp/drive/
- Dropbox: https://www.dropbox.com/ja/
- Microsoft OneDrive: https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/onedrive/online-cloud-storage
- Apple iCloud: https://www.apple.com/jp/icloud/
主要なNASメーカー
- Synology: https://www.synology.com/ja-jp
- QNAP: https://www.qnap.com/ja-jp/