クラウドサービスとは、インターネットなどのネットワークを経由して、サーバーやストレージ、ソフトウェアなどのITリソースを利用できるサービスのことです。
従来のIT環境では、企業や個人がサーバーやソフトウェアを自社で保有・管理する必要がありましたが、クラウドサービスを利用することで、これらのリソースをインターネット経由で必要な時に必要な分だけ利用できるようになりました。
中でも、クラウド会計ソフトは多くの企業にとって、身近で関心の高いサービスの一つではないでしょうか。
インターネットを通じて利用できるクラウド会計ソフトは、従来のインストール型の会計ソフトとは大きく異なります。
しかし、関心はあっても現在使っているソフトとの違いがピンと来ていなかったり、逆に期待して導入に踏み切ったけれど従来の方が使いやすかったととまどったりするケースも実際にあります。
そこで今回は、今さら聞けないクラウド会計ソフトの特長と、従来の会計ソフトとの違いを簡潔にまとめてみました。
自社にどちらが向いているかを判断する際の参考にしてくださいね。
クラウド会計ソフトと従来の会計ソフトとの違い
クラウド会計ソフト最大の特長は、インターネットを経由して機能を利用できるということ。
従来の会計ソフトは使用する端末一台一台にインストールする必要がありましたが、クラウドサービスではそれが不要です。
クラウド会計ソフトと従来のインストール型会計ソフトとの違いは、以下の様にまとめることができます。
項目 | クラウド会計ソフト | 従来の会計ソフト |
---|---|---|
利用環境 | インターネット環境が必要 | インストールしたPCでのみ利用可能 |
データ共有 | 複数人でリアルタイムに共有可能 | ファイルの受け渡しが必要 |
アップデート | 自動 | 手動でアップデートが必要 |
データ連携 | 外部サービスとの連携が容易 | データ連携に手間がかかる場合がある |
バックアップ | 自動 | 手動でバックアップが必要 |
セキュリティ | ベンダーが対策 | 自身でセキュリティ対策が必要 |
料金体系 | 月額または年額課金 | 買い切りまたは年額保守料 |
次に具体的な特長を見ていきましょう。
クラウド会計ソフトのメリット
インターネットを通じて使用するクラウド会計ソフトには、従来のインストール型ソフトにはない多くのメリットが存在します。
1. 場所を選ばない利用
- インターネット環境があれば、どこからでもアクセス可能です。
- リモートワークや外出先でも経理業務が行えます。
2. リアルタイムなデータ共有
- 複数人で同時にデータにアクセスし、共有できます。
- 税理士とのデータ共有もスムーズに行えます。
3. 自動アップデート
- 法改正やバージョンアップが自動で行われます。
- 常に最新の状態で利用できます。
4. データ連携の容易さ
- 銀行口座やクレジットカード、POSシステムなど、外部サービスとのデータ連携が容易です。
- 自動仕訳機能などにより、入力作業を大幅に削減できます。
5. バックアップとセキュリティ
- データはクラウド上に安全に保管され、自動的にバックアップされます。
- セキュリティ対策もベンダーによって行われます。
6. コスト削減
- インストール作業やサーバー管理が不要なため、初期費用や運用コストを削減できます。
- ソフトウェアの購入やアップデートにかかる費用も削減できます。
7. ペーパーレス化
- 請求書や領収書などの電子化が進み、ペーパーレス化を促進できます。
- 書類の保管スペースや管理コストを削減できます。
8. 経営状況の可視化
- リアルタイムなデータ分析やレポート機能により、経営状況を把握しやすくなります。
- 経営判断の迅速化や精度向上に貢献します。
クラウド会計ソフトのメリットが活きる例
- リモートワークを導入している企業
- 複数拠点で会計業務を行う企業
- 税理士とリアルタイムにデータ共有したい企業
- 経理業務の効率化やコスト削減を目指す企業
- ペーパーレス化を推進したい企業
- 経営状況をリアルタイムに把握したい企業
クラウド会計ソフトは、これらのメリットを活かすことで、企業の経理業務を効率化し、経営改善に貢献します。
クラウド会計ソフトのデメリット
クラウド会計ソフトは多くの企業にとって便利なツールですが、やはりデメリットも存在します。
1. インターネット環境への依存
- クラウド会計ソフトはインターネット環境が必須です。
インターネット回線が不安定だと、操作中にデータが消失したり、処理が遅延したりすることがあります。 - オフライン環境では利用できません。
2. セキュリティへの懸念
- データをクラウド上に保管するため、不正アクセスや情報漏洩のリスクがゼロではありません。
- ベンダーのセキュリティ対策に依存するため、自社でセキュリティ対策をコントロールできない場合があります。
3. カスタマイズ性の低さ
- クラウド会計ソフトは、ベンダーが提供するサービスを利用するため、自社の要件に合わせて柔軟にカスタマイズすることが難しい場合があります。
- 独自の帳票を作成したり、特殊な会計処理に対応したりすることが難しい場合があります。
4. 既存システムとの連携
- 既存のレガシーシステムとの連携が難しい場合、データの二重入力が発生したり、データの整合性が取れなくなったりする可能性があります。
- API連携などの機能が提供されていない場合、他のシステムとの連携が困難です。
5. 月額または年額の利用料
- クラウド会計ソフトは、月額または年額の利用料がかかります。
- 長期的に利用する場合、インストール型の会計ソフトよりもコストが高くなる可能性があります。
6. 操作習熟の必要性
- クラウド会計ソフトは、従来のインストール型の会計ソフトとは操作方法が異なる場合があります。
- 従業員が操作に慣れるまでに時間がかかる場合があります。
7. ベンダーへの依存
- ベンダーのサービスが停止した場合、会計業務が停止してしまう可能性があります。
- ベンダーが倒産した場合、データが消失してしまう可能性があります。
デメリットへの対策
- インターネット環境が安定しているか確認する。
- セキュリティ対策がしっかりしているベンダーを選ぶ。
- 既存システムとの連携がスムーズに行えるか確認する。
- 従業員への操作研修を実施する。
- 複数のベンダーを比較検討する。
クラウド会計ソフトを導入する際には、これらのデメリットを理解した上で、自社の状況に合わせて慎重に検討する必要があります。
クラウド会計ソフトが適している企業
このように、インターネット環境があればどこからでもアクセスでき、常に最新のバージョンを利用できるクラウド会計ソフト。
以下のような企業では、その特長を最大限に活かすことができるため、導入がおすすめです。
1. スタートアップ・中小企業
- 初期費用を抑えたい
- 経理担当者がいない、または少ない
- 場所や時間にとらわれず、柔軟に働きたい
- 他のクラウドサービスとの連携を重視する
2. 複数拠点を持つ企業
- リアルタイムで各拠点の会計情報を把握したい
- 拠点間のデータ共有をスムーズに行いたい
- 経理業務の効率化を図りたい
3. リモートワークを導入している企業
- 従業員がどこからでも会計業務を行えるようにしたい
- ペーパーレス化を推進したい
- セキュリティの高い環境で会計データを管理したい
4. 専門家との連携を重視する企業
- 税理士や会計士とリアルタイムで会計データを共有したい
- 専門家からのアドバイスをスムーズに受けたい
上記の項目に自社の特徴が当てはまったなら、ぜひ積極的にクラウドサービスへの移行を検討してみてください。きっとプラスに働くことしょう。
逆に、インターネット環境が安定していない、独自の特殊なシステムを使っている、今までのやり方で特に問題がないという場合には、利便性だけを当てにして一方的にクラウド化を進めるとかえってトラブルが起きる可能性もあります。
部分的な導入にとどめたり、従来のやり方を継続する方が良い場合もありますので、その場合もまず一度専門家にご相談ください。
クラウド会計ソフトを部分導入したご相談事例はこちらから
まとめ:特長を理解して自社に適した選択を!
このように、クラウド会計ソフトは従来のインストール型会計ソフトと比べて利便性が高いシステムですが、企業の在り方によっては必ずしもどちらかが優れていてどちらかが劣っているわけではありません。
自社の特徴やニーズに合わせて、最適なサービスを選択しましょう。
また、クラウドサービスに適した企業でも、その導入により格段に業務効率が改善することがある一方、自社の課題や事前準備を確認せず焦って移行してしまうと、本来のメリットが活かせなくなってしまう場合もあります。
導入後に「こんなはずじゃなかった!」とならないためにも、クラウド会計ソフトの選び方や必要な準備・手続きをしっかりと確認しておくことが大切です。
クラウド会計ソフトの導入を検討されている場合は、口コミだけで選ばずに、まずは専門家に相談してみましょう。
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