世界中を混乱に陥れたパンデミックから5年が経ちます。突如として襲い掛かった新型感染症の流行は、当時のビジネスの在り方を否応なく変化させました。
しかし、事業継続のリスクとなる出来事はパンデミックだけでなく、自然災害やサイバー攻撃・システム障害など多岐にわたります。
そこで、「もしも」の事態に備えて事前に企業を守る計画をたてておくのが『BCP(事業継続計画)』。
中でも、ITシステムに特化した『IT-BCP』は、現代のビジネスを継続していく上で絶対に欠かせない、特に重要な計画です。
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今回は、そんな「もしも」の時にビジネスを守る『IT-BCP』について、その考え方と計画手順について再度まとめてみました。
まだ取り組んでいないという企業様は、ぜひ目を通して取り組み始めてみてください。
そもそもBCPとは
『BCP』は Business Continuity Plan(ビジネス コンティニュイティ プラン) の略で、日本語では 事業継続計画(じぎょうけいぞくけいかく) と訳されます。
簡単に言うと、地震や台風などの自然災害、感染症の流行、システム障害、テロなどの予期せぬ緊急事態が発生した場合でも、企業の重要な事業を中断させないように、または中断しても可能な限り短い時間で復旧できるように、事前に計画・準備しておくことを指します。
ITにおけるBCPとは
ITにおけるBCPとは、予期せぬ緊急事態が発生した場合に、ITシステムを中断させないように、または中断しても可能な限り短い時間で復旧できるように、事前に計画・準備しておくことを指します。
これは、企業全体のBCPの一部として位置づけられ、ITシステムに特化した継続計画となります。
なぜ今、IT-BCPが重要なのか?
現代のビジネスには、ITシステムが必要不可欠です。顧客データ、売上情報、業務プロセス、コミュニケーションツール……これら全てがITシステムの上で動いていると言っても過言ではありません。
ではもし、このITシステムが突然機能しなくなってしまったらどうなるでしょう?
- 顧客情報にアクセスできず、取引がストップする。
- 重要なデータが失われ、事業の根幹が揺らいでしまう。
- データ漏洩やサービス停止により、法的な責任を問われる可能性がある。
- 社内コミュニケーションが滞り、混乱を招く。
想像するだけでも恐ろしいですよね。
ITシステムは今や、ビジネスの内部に張り巡らされた血管、企業の動脈のようなものなのです。
だからこそ、万が一の事態に備え、ITシステムをいかに守り、迅速に復旧させるかを事前に計画しておくことが、企業の存続にとって非常に重要なのです。
IT-BCPで具体的に何を考えるの?
では、IT-BCPでは具体的にどのようなことを考えるのでしょうか?主な要素をいくつかご紹介します。
1. 対象範囲の明確化
まず、「どのITシステムが事業継続にとって最も重要なのか?」を特定します。
全てのシステムが同じ重要度ではありません。基幹システム、顧客管理システム、ネットワークインフラなど、優先順位をつけることが大切です。
2. リスクの洗い出しと評価
次に、「どのようなリスクがITシステムを脅かす可能性があるのか?」を考えます。
自然災害(地震、津波、台風)、サイバー攻撃(ランサムウェア、DDoS攻撃)、システム障害(ハードウェア故障、ソフトウェアのバグ)、人的ミスなど、様々なリスクを想定し、その影響度と発生頻度を評価します。
3. 目標復旧時間(RTO)の設定
「システムが停止した場合、いつまでに復旧させなければならないのか?」という目標時間を、重要なシステムごとに設定します。
この目標時間に基づいて、具体的な復旧戦略を立てていきます。
4. 復旧戦略の策定
目標復旧時間を達成するために、具体的な対策を検討します。
- バックアップ体制
データの定期的なバックアップとその保管場所、復旧手順。 - 冗長化
重要なシステムや機器を二重化し、障害発生時に自動的に切り替わる仕組み。 - 代替環境
メインのシステムが利用できなくなった場合の代替となる環境(クラウド環境など)の準備。 - リモートアクセス
災害時でも従業員が社外から安全に業務を継続できる環境の整備。
5. 連絡体制の確立
「緊急事態が起きた時、誰に連絡を取るのか、どのように情報を共有するのか?」という連絡フローや方法などを定めておきます。
迅速かつ正確な情報伝達が、混乱を最小限に抑える鍵となります。
6. 訓練と見直し
準備した計画が本当にうまくいくか、実際に試してみることが大切です。
定期的な復旧訓練を通じて課題や改善点が見つかるだけでなく、いざという時にも慌てずに対応できるようになります。
IT-BCPは、会社の未来を守る保険
IT-BCPは、決して難しいものではなく、未来のビジネスを守るための大切な備えです。
予期せぬ事態はいつ起こるかわかりません。だからこそ、事前にしっかりと計画を立て、準備しておくことが、事業継続の強い味方となるのです。
まだIT-BCPに取り組んでいないという企業様は、ぜひこの機会に検討を始めてみてください。今のその行動が、企業の未来を救うかもしれないのです。
そしてもし、具体的な進め方に悩んだりつまずいたりすることがあれば、ITのプロである『IT戦略顧問』までお気軽にご相談ください。
その小さな一歩が、大きな安心につながるはずです。