クラウド会計ソフトの導入あるあるなのが、「どれを選んでよいかわからない!」というお悩み。
そしてそれに対する、やはりあるあるな提案が「無料期間を活用して比較検討しましょう!」というもの。
しかしこれが要注意!というのも、クラウド会計ソフトの無料期間は、代表的なもので1ヶ月~長くても1年程度と短いことが多く、複数のソフトを比較しようにも本格的な機能を試せるどころか、準備ができたか使い方を覚えたかという段階で時間切れになってしまうことも少なくないからです。
そこでご紹介したいのが、この無料期間を無駄にせず、本当に適しているソフトを選び抜くおすすめのテスト術。
そのためには、入念な準備とロードマップが必要になります。
いきなり無料トライアルを開始してしまうと結局なにもわからなかったということになりかねませんので、ぜひこの記事を読んで戦略的にテストを進めてみてください。
無料期間内のフル機能トライアルは諦めろ!
そもそも、まず大前提として気を付けておきたいのが、無料期間内にすべての機能を試して使用感を確かめることは、ほぼ不可能ということです。
なぜなら、利用には初期設定からデータの登録・連携など、使う前にしなければならないことがたくさんあるうえ、決算や申告などのタイミングによっては、試用期間内に有料版の機能を使い切るチャンスすらないからです。
試用期間中は機能制限がないことがメリットなのに、実際には全機能を使えないまま複数のソフトを体験し、トライアルが終わってみたら結局どれがよかったかわからないというのは、本末転倒ですよね。
そこでおすすめしたいのが、クラウド会計ソフトの中でも、まずは無期限に使える一つの機能だけをとことん試してみること。
たくさんの機能があってもどうせ無料期間内に試しきれないなら、いっそのこと機能を絞るかわりに納得するまで使い込んでみた方が、ソフトの比較としては有益なのです。
活⽤すべきはクラウド会計ソフトのあの機能!
では、クラウド会計ソフトの中で無期限に使える機能とは何でしょうか。それは「請求書発行ソフト」です。
ほとんどのクラウド会計ソフトには、機能や利用枚数などに制限はあるものの、基本的に無料かつ無期限で利用できる請求書発行ソフトが用意されているからです。
請求書発行という限定された作業ではありますが、期間の縛りがなくなることで、以下のようなメリットが期待できます。
- 請求書発行に関する一連の流れを体験できる
業務の途中で時間切れになることがなく、一通りの手順をすべて確かめることができます。 - 操作に慣れやすくソフトの使用感を確認できる
特定の作業を繰り返すことになるので、操作画面のわかりやすさや直感的に使えるかなど、ソフトの使用感を比較しやすくなります。
短期間にたくさんのことを試そうとするのではなく、まずは一つの機能を使い込んだうえで他のソフトと比較することで、業務に合っているかや使いやすいかなどをしっかりと見極められるようになるのです。
無料トライアルは導入前の最終チェック
このように、請求書発行ソフトをある程度使い込んでから比較していくと、なんとなく「こっちのソフトが使いやすい」とか、「このソフトは合わない」というような感覚がつかめてくるはずです。
「これがよいかも!」というソフトを見つけたら、その時こそ、いよいよ無料トライアルのスタート!
つまり、無料期間を複数のソフトを比較検討する目的で利用するのではなく、事前にある程度本命を絞ったうえで、導入前の最終確認として活用するのです。
なお、無料トライアルを始める前には、限られた時間を無駄にしないためにも、以下の3段階を踏まえて入念な準備をしておきましょう。
無料期間を有意義に活用するための3フェーズ戦略
せっかくめぼしいソフトを見つけてテストするのですから、無料期間を「単なるお試し」で終わらせず、導入後の運用を具体的にイメージできるように動くことがポイントです。
フェーズ1:【準備期間】データと目標の明確化
無料期間が始まる前に、テストのための環境を整えます。
- テストデータを準備する:
過去1〜2週間分の銀行やクレジットカードの利用明細(PDFなど)、領収書や請求書(数件分)をまとめておきます。これが「生きたテストデータ」になります。 - 最重要機能を絞り込む:
最も効率化したい業務(例:経費精算、売掛金管理、自動仕訳など)を明確にし、無料期間中にその機能の操作感だけは必ず確認するという目標を立てます。
- チュートリアルを視聴する:
ソフトの公式サイトやYouTubeにある設定関連の動画を先に見ておき、期間開始と同時に迷わず設定に着手できるようにします。
フェーズ2:【集中テスト期間】コア機能の徹底検証
無料期間が始まったら、準備したデータと目標に沿って、実戦形式でテストを行います。
| 最重要テスト項目 | 具体的アクション | 評価ポイント |
| 自動連携 | メインの銀行口座とクレジットカードを連携設定する。 | 連携がスムーズか、取り込みが安定しているか。 |
| 自動仕訳 | 取り込んだ明細に対して、手動で仕訳を登録し、その仕訳をソフトに学習させる(自動仕訳ルールを作成する)。 | 2回目以降、ソフトの仕訳提案が正確か、修正の手間が少ないか。 |
| 証憑(しょうひょう)処理 | スマホアプリで領収書やレシートを撮影し、画像認識機能(OCR)を試す。 | 読み取り精度が高いか、仕訳項目が正確に提案されるか。 |
| アウトプット | 期間中に作った帳簿で試算表や残高一覧を見て、必要な情報がすぐに見られるか。 | 画面が見やすいか、必要なレポート(例:月次推移)が簡単に出せるか。 |
| サポート | あえて少し難しい質問(例:特定の勘定科目の使い方)をチャットやメールで投げかけてみる。 | サポートの応答速度と的確さ。 |
フェーズ3:【評価期間】移行の最終判断
無料期間が終了する数日前に、テスト結果を評価します。
- 業務フローへの適合性を評価する:
このソフトを導入した場合、「経理担当者の作業時間」と「経費申請者の手間」がそれぞれどれくらい短縮されそうかを具体的に見積もります。 - 連携機能を再確認する:
もし有料プランに移行した場合に、他のソフト(請求書や給与計算など)との連携がスムーズにできるか、追加料金が発生しないかを確認します。 - 料金プランを検討する:
無料期間で試した機能が、最も安い有料プランで利用できるか、一つ上のプランが必要かを検討し、年間コストを確定させます。
まとめ:無料トライアルは比較が済んでから!
クラウド会計ソフトの導入にあたっては、まずは比較検討のためにと無料トライアルに飛びつきがちです。
しかし、複数のソフトを短期間使ってみても、実際には機能を使いこなせず、よくわからないままに無料期間が終わてしまうケースがよくあります。
無料トライアルは、多くの場合初回限定。その一回を無駄にしないためにも、無料期間で比較するのではなく、比較した結果を無料期間で確かめると発想を切り替えてみてください。
そのためには、ある種の諦めも肝心です。いきなり高度な機能を試そうとするのではなく、まずは「請求書発行ソフト」という限られた機能を無期限に利用してみて、ソフトの扱いに慣れたり使用感をつかむところから比較を始めてみてはいかがでしょう。








