人の手で仕事をしている以上、どんな状況でも必ずどこかで問題やミスが発生します。
こうした問題、すなわちインシデントを未然に防いだり、事前に対策を講じたりすることで、万が一トラブルが発生したとしても、被害を最小限に抑えることができます。
インシデント管理を適切に行わないと、発生した問題の対処に時間がかかってしまったり、同じ問題が発生した時の対処が上手く行かなかったりと不都合が生じます。
インシデント管理がスムーズにできるだけで、問題管理も効率的に行うことができるようになり、システムの利用者も安心して利用する事が出来ます。
ですが、実際にはどこからどこまでの範囲を、どう対処して良いのか悩まれるかと思います。
そこで今回は、インシデント管理の定義と実施目的や、効率化の方法についてご紹介していきたいと思います。
インシデント管理とは?
そもそもインシデント管理とは、どのような状況のことを指すのでしょうか。
インシデントという言葉が飛び交う機会は多いですが、受け取る人によって認識がずれることで、意図が通じなくなることも多いです。
ここからは、IT用語としての「インシデント」の意味を解説したうえで、「インシデント管理」と「問題管理」の違いについてご紹介していきます。
「インシデント」とは
「インシデント」の意味は、「好ましくない出来事」「事件」となります。
IT用語としての定義は、「中断・阻害・損失・緊急事態など、危機になり得る状況や、それらを引き起こし得る状況」とされています。
発生した問題に対して「インシデントが発生した」と使う場面は多いかと思います。
システムのエラーやフリーズなど、突発的な出来事であり、なおかつ迅速な対応が求められるトラブルは全てインシデントとなります。
「インシデント管理」とは
インシデント管理とは、インシデントが発生した際に、迅速に対処して復旧することで、影響を最小限に抑える管理プロセスのことを指します。
「インシデント」は、サービスの品質を低下させる事象を示しているのに対して、「インシデント管理」は、インシデント発生時にいち早く復旧させるための対応フローとなります。
インシデント管理の役割は、インシデントの被害を最小限に抑え、迅速に復旧させることです。
主な対応フローとしては、下記の通りです。
- インシデント発生
- 発生日時や事象を確認
- 早急に対応できる解決策を立案
- 解決策の実施
- 復旧確認
復旧後は、いつ、どのようなインシデントが発生し、どう解決したかを記録として残しておくことで、同様のインシデントが発生した際、迅速に対応できるようになります。
「問題管理」との違いは?
インシデント管理とは、発生したインシデントに対して対応していくものでした。
それに対して問題管理とは、発生したインシデントの原因を突き止めて根本的な改善策を実行し、再発しないようにすることを指します。
問題管理はインシデント管理の一歩先を進むイメージとなります。
被害の影響を最小限に抑えるため、インシデント管理では早急に復旧できる対策を講じて、その後問題管理で根本原因の追求、解決を行う流れとなります。
その場で対処するインシデント管理と比べ、状況によっては運用自体を見直す必要が出てくることから、解決するまでに時間がかかります。
インシデント管理のフロー
インシデント管理を行うときは、以下のようなステップで進めて行きます。
①インシデントの検出
どのようなインシデントがいつから発生して、どの範囲まで影響しているのか、詳細を確認します。
このとき、調査が甘いと予想外の範囲にまで被害が及ぶ可能性がありますので、目の前の事象だけではなく、関連するシステムも調査することが重要になります。
②インシデントの分類
発生したインシデントに応じて、緊急度・重要度・業務影響・発見者・対応者・共有事項をまとめます。
どういったインシデントなのかを正確に把握し、障害の緊急性を見極めたうえで対応方法を検討します。
③担当者によるインシデントの解消
簡単に対応できるものであれば、担当者が直接対応します。
簡単に対処できる場合でも、ナレッジベースにどのようなインシデントが発生し、どう対処したかを記録として残しておくことで、同様の事態が発生した際にも早急に解決できます。
④エスカレーションによるインシデントの解消
担当者だけで対応できない複雑なものや、判断に困るものについてはエスカレーションによりマネージャーや責任者が対応します。
被害の影響が大きくなる可能性がある場合は、事前に各部署へ発生したインシデントについて共有し、対応状況や復旧目処を連絡します。
⑤インシデントの管理
システム復旧後、インシデント発生から復旧までの記録をナレッジベースへ記録します。
その後、経過観察や顧客のフォローが必要な場合は、完了するまで管理を続けます。
⑥完了
インシデント解消後、無事業務が再開されたら関係者へ完了報告をして、完了となります。
たとえ小さなインシデントであっても、再発防止策を先延ばしにすることで大きなインシデントにつながる可能性は十分に考えられますので、早急に対策を行うことが重要です。
このような流れに沿ってインシデント管理を行っていきます。
インシデント管理とは、インシデントの発生から記録し、復旧後の完了記録までの工程となります。
そして、再発防止のためにインシデント発生の根本原因の排除を行うのが「問題管理」となっていきます。
現場においては、インシデント発生による被害を最小限に抑えるためにも、この工程を迅速に行う必要があります。
インシデント管理を行う目的
インシデント管理を適切に行うことで、あらゆるメリットが得られます。
まず、ユーザーサポートについては、過去の対応などナレッジベースで管理することで、スムーズにインシデント管理を行うことができ、迅速な問題解決が行えるようになります。
マネージャー、管理者側については、このインシデント管理を適切に行うことによって、重大なインシデントや多発するインシデントに対して、問題管理のための分析に時間を活用できるようになります。
その結果、インシデントの再発を防ぐことが可能になります。
もちろん、実際にシステムを使っているユーザーもサポートを適切に受けることが出来ますので、信頼と安心につながります。
適切にインシデント管理を行うことで、問題管理もスムーズに実施することが可能となり、利用するユーザーも安心してシステムが使えるようになるのです。
インシデント管理を行う目的は、その場のインシデントを処理するだけではなく、その後の問題管理を適切に行うためでもあります。
さらに、ユーザーがより安心して業務に取り組めるようになりますので、インシデント管理を見直すことは非常にメリットがあると言えます。
インシデント管理はITツールを導入すべき?
インシデント管理は、トラブル解決の迅速化や、その後の問題管理のために大切です。
しかし、インシデント管理を行う場合、さまざまな課題に直面することがあります。
例えば、管理内容の煩雑化や、進捗状況の把握が難しい点、管理の手法が属人化してしまいノウハウが蓄積されない、などが挙げられます。
これらの課題の中には、適切なインシデント管理ツールを活用することで解消できるものもあります。
インシデント管理ツールには、インシデント管理において重要な「記録」と「共有」の2点を迅速に行うための機能が搭載されています。
現在、インシデント管理用のツールやソフトウェアが存在していないのであれば、新しく導入することを検討するのも視野に入れるべきでしょう。
重要なポイントは費用対効果を見極めること
インシデント管理のツールの導入は、管理をより正確かつ迅速に行うためにも必要と言えます。
ですが、適切なツールを導入しないと、運用に支障が出てしまします。
インシデント管理ツールの選び方については、現場での使いやすさが当然ながら重要となります。
状況の変化にも柔軟に対応できるかどうかというのも重要です。
また、費用対効果が見込めないのであれば意味を成しません。
インシデント管理ツールを導入するために必要な費用は、ツールやアカウント数にもよりますが、年間でおおよそ30万~60万円かかります。
「LanScope Cat」や「Taskworld」などといったツールが1ユーザーあたり1000円前後の値段です。30人ユーザーが居る場合、1000円×30人となるので、月額は3万円、年間にすると36万円の金額です。
そのため、費用対効果について考慮し、本当にそのツールでなければできないのかしっかりと検討する必要があります。
インシデント管理ツールにかける費用を抑えて、その分の金額をシステム強化や保守に回すことで、より効率よく解決できる場合もあります。
適切なインシデント管理を行うために
インシデント管理の目的は、その場で発生したインシデントの記録をナレッジベースで管理し、同様のインシデントが発生した際に迅速に対処するためのものでした。
そして適切にインシデント管理を行うには、問題発生から解決までの記録とその情報の共有が柔軟かつ迅速にできる必要があります。
このインシデント管理が適切に出来るかどうかで、以降の問題管理がスムーズにできるかどうかにも繋がっていきます。
こだまシステムでは、こうしたインシデント管理のコンサルティングから実務管理まで幅広く対応しています。
金融系のシステムを管理してきたスタッフが直接訪問し、最適なインシデント管理をご提案します。
適切にインシデント管理を行うことで、再発防止に向けた問題管理の面も対策することができますので、インシデントの発生しにくい現場にしていくことが可能です。
インシデントが発生する頻度が高かったり、現在のインシデント管理について疑問に思われた際には、ぜひご相談ください。